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中小企業診断士の経営・起業コラム

起業塾リアルイースタートの担当をしている中小企業診断士の東によるコラムを連載していきます。起業や経営やビジネスに関することで、一般的な書物やサイトに掲載されていない、実務に即した話題について記載していく予定です。

※中小企業診断士とは、経済産業大臣が登録する、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格です。

制約条件の理論

『制約条件の理論』は物理学者であるエリヤフ・ゴールドラット氏による生産管理に関する理論で、 ベストセラーとなった「ザ・ゴール」で有名です。 中小企業診断士の2次試験では「第3問」の範囲ですね。 自分の場合は、1回目の2次試験で落ち、2回目はこれのみを学んで合格しました。それぐらい重要な知識ですw 具体的には「工場の生産管理」におけるノウハウですが、普遍化することでビジネスに広く応用できます。

  

ボトルネック「のみ」の改善をせよ

工場の生産工程で、A→B→Cと3つの工程を経て完成に至る製品があるとします。 Aは1時間当たり100個、Bは70個、Cは200個処理できるとします。 さて、工場全体では1時間当たり何個作れるでしょうか? そう、70個ですね。 B工程で70個しか処理できないので、Aで100個作れても処理しきれず、Cで200個処理できる能力があっても70個しか流れてきません。 1番弱い箇所の生産量によって「全体が制約される」、この部分がボトルネックです。 ここでAやCの生産効率をいくら上げても、生産力は変わりません。 しかしBの生産力を70から80に上げると、その分全体の生産力は80に上がります。 だから、全体の効率を一生懸命あげても意味は無くて、ボトルネックのみを改善することに注力することで、初めて成果が向上します。 ABCそれぞれが生産性を10%上げる、どれも努力や労力は同じくらいとしましょう。 しかし、Aが110になることやCが220になることは工場の生産性にとっては全く意味がなく、 Bが70→77になる「7」だけが、意味のある改善なのです。

工場の生産から始まった理論なので工場の事例で説明しましたが、これはビジネス全般に応用可能です。 営業(販売活動)・工事(生産)・事務処理・仕入れ資金のどこがボトルネックか? 営業工数(マンパワー)・担当顧客数(マーケット)のどちらがボトルネックか、などのように使います(ボトルネック要素をベースに予算を組む)。 ちなみにビジネスを離れて、たとえ話を使う時には、光合成の話をする時が多いです。 光合成には、「水・二酸化炭素・光・温度」の4要素が必要ですが、一番足りない要素を増やしていく場合のみ光合成量が増大、 その要素が十分になりボトルネックでなくなると、次に弱かった要素が新たなボトルネックとなって、その要素次第で変化する、実験でそんなグラフを見たことは無いでしょうか? 結果が未達の時に、何とかしようとボトルネック外の要素を改善しようとしても無駄なわけです。 そのためボトルネック以外の役割の人に求められることは、 自分の仕事の改善ではなく、ボトルネックの人の仕事を手伝うことになります。 これを実務での軍師の助言として行うと 「そんなところ頑張っても無駄ですよ。根性論は意味ないです」とか 「君たちは張り切っても意味ないから、おとなしく〇〇の手伝いして。手柄立てようとして邪魔するのはやめて。」 とかなるわけですが、この理論を知らない人からは「自分たちにケチつけて喧嘩売ってくるやつ」 ということで部門間トラブルになったりしますのでご注意をw

  

ボトルネックは強み!

例えば、営業会社が販売契約を取り、事務部門が事務処理をし、工事部門が設置して完了する事例を考えましょう。 営業は新規でアプローチし1件当たり高い利益を得るとても難しい仕事で、ここで会社の利益が生まれるビジネスモデルです。 営業一人で1の注文、事務一人で20の処理、工事人一人で5の工事が出来るとします。 営業が30人、事務が1人、工事人が5人いました。ボトルネックはどこで、月に処理できる契約数はいくつになるでしょうか? はい、正解は事務員がボトルネック、そして彼が処理できる20件が会社として処理できる注文量です。 そして会社は、事務員がなるべく効率的に仕事が出来るようにするのが、最適な選択となります。 ・・・・実際にこういうことあると思いますか? 現実には、こういう場合、事務員を補強します。採用しても良いですし、営業の中で成果が出ない人を回しても良いです。 そうすると今度は工事部門がボトルネックになります。こうすると業界にもよりますが、大体外注で頼める業者は存在します。 そして営業がボトルネックになるので、今度はここを改善します。 ・・・・しかし「新規で粗利を獲得できる営業」というのはどこの世界でも喉から手が出るほど欲しい能力、簡単に補充できません。 なので、ボトルネックになるのは結果的に、 「最も貴重」「最も価値がある」「業界・会社・ビジネスモデルにおいて核となる」人や部門や要素になります。 企業の競争優位の源泉となる箇所が、結果的にボトルネックとなるのです。

ボトルネックというと、弱点・弱い・みたいな言葉のイメージがありますが、実際は強みの部分になります。 ちょっと言葉のイメージと逆になって違和感を感じる人もいるため、その誤解を解消するために、 ボトルネックのことを「レバレッジポイント」と呼ぶこともあります。

なお、このボトルネックの概念を、時間に置き換えて、プロセス管理の設計をする時に使う応用編が、クリティカルパスとなります。 こちらも、「ここを改善すれば全体が早くなる」「ここで遅れが生じると全体が遅れる」という頑張りポイントを明確にするものです。

  

根本的には「孫子」と共通

ボトルネックの考え方は、遡っていくと2500年前の人類の英知にたどり着きます。 そう、「孫子」です。 孫子の考え方をものすごく簡略化すると、 ・無駄をしない ・無理をしない ・兵力(リソース)の集中 になります。「戦いを略す」戦略ですね。 ありとあらゆる場面に対して「気合と根性」で全力を出すのではなく、「意味がある所のみ」にリソースを集中して全力を出すのです。 ボトルネック=競争優位の源泉がいかに全力を出せるか、非効率を排除できるか、という所から逆算して計画を設計する、 それ以外の部分は「あえて余計なことをしない、動かさない、サポートに回る」ことが全社最適になる、ということです。

まずは「自分たちの会社・ビジネスモデルの ボトルネック(レバレッジポイント:強み)はどこなんだろう?」と考える所から始めましょう。

第1回のコラム、いかがでしたでしょうか? 今後も不定期に更新をしていきたいと思います。 感想やご意見はこちらのフォーム若しくはtwitterまで。

中小企業診断士 東秀樹(平成16年登録。)